更新日 2021年12月01日
胃がんは、日本人に多い代表的ながんです。最近は減少傾向にあり、また早期に発見して適切な治療を受ければ十分に治る可能性が高くなっています。ただし、進行するとほかの臓器に転移する危険も高く、油断は禁物です。
胃がんの進行
胃がんでは、胃の壁のもっとも内側の粘膜層が、がん細胞になります。進行すると胃壁の深くまで広がっていき、やがては胃壁を突き破って表面まで飛び出し、肝臓やすい臓、大腸など、ほかの臓器や組織に広がっていきます。
また、がん細胞は、リンパ管に入ってリンパ節に転移したり、血管に入って血液によって移動し、肝臓や肺など別の場所で増殖することもあります。これを転移といいます。リンパ節には、早期のがんでも転移することがあります。
胃壁の浸潤度
T1 ▶がんが粘膜、粘膜下層にとどまっている。
T2 ▶がんが固有筋層、漿膜下層までにとどまっている。
T3 ▶がんが漿膜を超えて胃の表面まで出ている。
T4 ▶がんが表面に出た上、ほかの内臓や組織にも広がっている。
リンパ節転移の進行度
N0 ▶リンパ節へは転移していない。
N1 ▶胃に接したリンパ節に転移している。
N2 ▶胃を養う血管に沿ったリンパ節に転移している。
N3 ▶胃から離れた遠くのリンパ節に転移している。
胃がんの病期
がんの進行度は、病期(ステージ)で表します。胃壁の浸潤度とリンパ節への転移などによって、Ⅰ〜Ⅳのステージに分類されます。数字が大きくなるほどがんは進行しており、転移の可能性も高くなっていきます。
病期が重くなるにともない、5 年生存率は大幅に低下していきますが、その逆に、胃がんをⅠ期で発見できれば、5 年生存率は98%を超えるというデータも出ています。胃がんは、早期発見・治療が何より大切なのです。
症状
おもな症状は、なんとなく胃が重い、不快感がある、胃が痛い、胸やけがする、食欲がない、食べ物の好みが変わったなど。早期の段階では症状がまったくみられない人が多く、なかには進行しても症状がみられない人もいます。
治療方法
胃がんの治療は、病期に応じて「内視鏡的治療」「手術療法(外科療法)」「化学療法(抗がん剤治療)」「放射線療法」が行われます。早期であれば、内視鏡を使って開腹することなく胃がんを切除することも可能です。手術治療の場合でも、腹腔鏡を使用して体への負担を減らす方法もあります。
検査方法
一般の胃がん検診では、エックス線で胃の形や粘膜を撮影する「胃エックス線検査」か「胃内視鏡検査」が行われます。精密検査や人間ドックでは、「胃内視鏡検査」などさらにくわしく調べるための検査が行われます。
これらの日本の診断技術は世界トップレベルで、胃がんの死亡率が減少傾向にあるのは、胃がん検診で早期発見の確率が高まったからといえます。胃がんのリスクを調べる「ヘリコバクターピロリ抗体検査」という検査を行う医療機関もあります。
50 歳を超えたら、2 年に1 回は胃がん検診を受けましょう。
※当分の間、胃部エックス線検査については、40 歳以上に対し年1 回実施可。
監修/森山 紀之(元 国立がん研究センターがん予防・検診研究センター長)