がんと就労の実際

更新日 2021年12月01日

生涯のうちに、「日本人の2人に1人ががん」になり、そのうち約3分の1の人が20~64歳までの働く世代です。今後、働きながらがんの治療を続ける人が増えることは間違いないと思われます。
がんになっても働きながら安心して治療を受けるため、職場においては働く意欲のある貴重な人材を失わないために、がん治療と仕事の両立支援は大きな課題となっています。こうした現状を踏まえて、これからの“がんと仕事”について考えてみましょう。

がん患者の3人に1人は就労年齢でがんになっています

60歳代になっても働く人と女性の就労者の増加によって、働く世代でがんにかかる人が増えています。今後はさらに、がんになる就労者が増えていくと予測されています。性別・年齢別がん罹患者数のグラフ。2014年に診断されたがん罹患者数は867,408人。20~64歳は全体の27.0%の234,612人。20~69歳は全体の41.4%の359,092人。女性の社会進出世代の35~39歳・40~44歳・45~49歳が男性のがん罹患者より多くなっています。また、雇用年齢のの長期化した60~64歳・65~69歳では男女ともに増加していますが、特に男性のがん罹患者が突出して多くなっています。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」

がんになっても働き続けられるようになってきています

医師

医療の進歩で、がんと診断された人の生存率も伸び、かつての「不治の病」も「長く付き合う病気」に変化しています。実際に32.5万人のがん患者さんが働きながら治療しています。

仕事を持ちながら通院するがん患者(32.5万人)の内訳

仕事を持ちながら通院するがん患者(32.5万人)の内訳棒グラフ。男性14.4万人。女性18.1万人。そのうち15~39歳の男性が約0.5万人、女性2万人。40~49歳の男性約1万人、女性5万人。50~59歳の男性約3.5万人、女性7万人。60~69歳の男性約6万人、女性約3.5万人。70歳以上の男性約3万人、女性約0.7万人

出典:厚生労働省「平成22年国民生活基礎調査」をもとに同省健康局が特別集計

がん治療は入院治療から外来治療へ変化

がん治療は入院治療から外来治療へ変化することを示すグラフ。平成11年入院136.8万人、外来119.9万人。平成14年入院139.4万人、外来119.7万人。平成17年入院144.9万人、外来140.1万人。平成20年に逆転し、外来156.4万人、入院141.4万人。平成23年外来163.5万人、入院134.8万人。平成26年外来171.4万人、入院129.4万人。

出典:厚生労働省「平成26年(2014)患者調査」

仕事を「辞めない・辞めさせない」でください

がんと診断された後の就労状況の変化

がんと診断された後の就労状況の変化を示す円グラフ。現在も勤務している47.9%。休職中9.5%。依願退職30.5%。解雇4.1%。その他8.1%。相談者「がんになったら日常生活もままならない。まして働くなんて」研究者「それは誤った考えですよ」

がんと診断された後に、体力低下や勤務調整が困難であることなどを理由に依願退職した・解雇された人は約35%にも上ります。がん就労者も職場も、がん治療などの現状を正しく知って、早まった選択をしないようにしたいものです。

出典:「がんの社会学」に関する研究グループ「がんと向き合った4,054人の声」

約7割の人が「治療と仕事の両立は無理」と思っている

約7割の人が「治療と仕事の両立は無理」と思っている円グラフ。どちらかと言えばそう思わない35.2%。そう思わない29.3%。どちらかといえばそう思う18.1%。そう思う9.8%。わからない7.7%

Q.現在の日本の社会は、がんの治療や検査のために2週間に一度程度病院に通う必要がある場合、働き続けられる環境だと思いますか?

出典:内閣府「がん対策に関する世論調査」(平成28年11月調査)

働き盛りの女性を襲うがん

働き盛りの女性を襲うがん

50歳代前半までのがんの罹患率は、女性が男性を大きく上回り、20歳代では男性の約1.4倍、30歳代では約2.3倍に増えています。理由には、女性特有のがん(乳がんや子宮頸がんなど)は年齢が若い頃から発症しやすいことがあげられます。がんと就労の問題では、女性特有のがんに対して、どのように配慮するかも大きな問題のひとつです。

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