更新日 2021年12月01日
すべてのがん就労者に当てはまる就労支援の対応策を示すのは簡単ではありません。年齢や性、症状、本人の希望、就労状況(業務内容や勤務形態、職場の規模、業種、環境)などが千差万別で個人差が大きいからです。大切なのは、がん就労者を取り巻く関係者全員が、「がんになっても働ける」ことを理解し、その人や場面に応じてケースバイケースで対応することです。
問題を解決しやすい体制づくり
いつ自分が、職場の誰かががんになってもおかしくない時代です。そこで重要なのは、就労支援の制度を整備するとともに、日頃からすべての就労者が自発的に相談しやすい体制を整備・充実させることです。
がん就労者と職場が直面する問題と取り組みの例
支え合う職場づくりは日頃のコミュニケーションから
がん就労者は、がんそのものや治療に伴う後遺症や副作用などによって、さまざまな身体的・心理的な障害を受けています。それらを抱えながら働くには、職場の理解・協力などの支援が重要です。仕事を継続できた一番大きな理由として、多くのがん就労者が「職場の理解と支え」をあげています。
仕事を継続できた一番大きな理由
がん就労者の治療と仕事の両立がうまくいくかどうかは、がんになる以前からがん就労者と職場のコミュニケーションがとれているか、情報が共有できているかが大きく影響します。コミュニケーションがよくとれていて、信頼関係が築けていると「お互いさま」の意識が育まれ、誰にとっても働きやすい職場になっていきます。
出典:「がんの社会学」に関する研究グループ「がんと向き合った4,054人の声」
がん就労者は・・・
がんになっても働き続けるためには、病状や必要な支援、今後の回復の予測などを職場に説明し、理解を求めることが必要です。また、自分の仕事の進捗を「見える化」「共有化」したり、仕事をフォローしてくれる周囲の人たちへの感謝の気持ちを持ち、伝えていくことが大切です。
職場では・・・
就労継続支援のために、がん就労者本人の体の状態、勤務時間、仕事の内容、量、方法などについて、本人の意向を確認して、両立支援プランを検討します。治療を含めた今後の計画やどの程度の仕事ができるかなど、本人もわからないことがありますので、「仕事ぶり」を見ながら適宜対応することが望まれます。職場スタッフには、可能な範囲でがん就労者の状態を知らせ、理解を求めることも大切です。
就労継続のためにがん就労者と上司などが共有したい情報(例)
- 現在の症状
- 入院や通院治療の必要性とその期間
- 治療の内容、スケジュール(頻度など)
- 通勤や仕事に影響する症状や副作用の有無・症状
- できる仕事・できない仕事(時間外労働・出張など)
- 職場の協力や理解を得たいこと(通院時間や休憩場所の確保など)
- 緊急時の対応方法 など
がん就労者の状態を理解するため、がん治療の基本知識を押さえておきましょう
がんの治療は、がんの種類や進行度に応じて、手術・放射線治療・抗がん剤治療などの、さまざまな治療を組み合わせるのが基本です。「手術が終われば治療終了」ではなく、治療や経過観察の継続が必要であり、また突然に手術の後遺症や治療の副作用が現れる場合もあります。
がんの3大治療と治療の後遺症・副作用
手術
手術後の経過や合併症などに個人差がある。
放射線治療
多くのがんで放射線治療の治癒率は、手術と同程度。原則は通院治療で、1回あたり10~20分程度の治療を毎日(月~金、数週間)行うことが多い。治療中は通院による疲労に加え、治療による倦怠感が現れることがある。
抗がん剤治療
通院治療で行うことが多く、点滴による治療の場合は1回あたり数時間の治療を1~2週間程度の周期で行うのが一般的。副作用(脱毛、しびれ、食欲不振など)によって体調変化を認めることがある。