更新日 2021年12月01日
がん就労者の中には、働く意欲や能力があっても、職場の体制が不十分なために働き続けることが困難になる場合も少なくありません。がん就労者が安心して働ける職場環境の整備は、がん就労者以外にとっても、働く人の多様な背景を尊重する働きがいのある職場となり、職場全体の活力の向上にもつながっていきます。
関係者全員で治療と仕事の両立支援を
治療と仕事の両立支援のためには、がん就労者を中心に、人事労務担当者、上司・同僚、産業医※1や産業保健スタッフ(保健師・看護師など)、主治医、その他の医療スタッフ(看護師、医療ソーシャルワーカー※2など)、地域で就労者を支援する機関・関係者などが連携して、具体的な支援を行うことが望まれます。そのためには、以下に紹介する支援の進め方が役立ちます。
※1「産業医」は、職場において就労者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師。
※2「医療ソーシャルワーカー」は、医療機関において、患者やその家族の経済的、心理的、社会的問題の解決を支援する専門家。
※3「産業保健総合支援センター」は、全国の都道府県に設置されている産業保健関係者を支援する組織。産業保健に関する相談・研修・セミナーなどを実施。
治療と仕事の両立支援の進め方の一例
※ 「就業上の措置」は、就労者の実情を考慮し、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業などの回数減少などの措置を行うこと。
出典:厚生労働省「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」
職場内の調整について
人事労務担当者や上司は「どの程度まで職場と情報を共有するのか」をがん就労者本人に確認し、必要に応じて本人の情報を職場スタッフと共有します。
本人を受け入れる職場スタッフとは、対応可能なことを意見交換し、要望も聞きましょう。職場がどのようなサポート体制をとれるかを正直に伝えることは、本人の安心感と信頼感にもつながります。
人事労務担当者・産業医などとの連携
上司から人事労務担当者に、がん就労者本人の承諾のもと定期的に本人の状況や要望を伝えましょう。治療や副作用などに対する配慮が必要なときは、産業医・産業保健スタッフと連携し、医学的な助言を受けます。勤務調整や配置転換などでフレキシブルな対処を心がけましょう。
主治医など外部医療機関との連携
主治医との連絡はがん就労者本人を通すのが基本です。産業医・産業保健スタッフ、人事労務担当者などが主治医と情報交換することが必要になった場合は、原則として本人の承諾を得て行いましょう。
本人も必要に応じて職場に詳しい診断書を提出したり、職場の理解が得られやすいように、主治医から産業医を介して、本人の状態を職場に説明してもらうことも検討しましょう。
就業規則や支援制度の充実
治療と仕事の両立は、職場の就業規則や支援制度の充実度に大きく左右されます。
休暇制度(有休や傷病・病気休暇)や勤務制度(時差出勤、短時間勤務、在宅勤務など)、休憩を認めるなどの柔軟な対応があれば、治療に専念でき、治療による体力の低下に合わせた働き方が選択できます。
多くの場合、就労する力はじょじょに回復します。支援制度が充実している企業では、休職後1年以内に約6割の人がフルタイムで復職でき、退職率も低いという報告もあります。
出典:厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業「企業(上司・同僚、人事労務、事業主)のための『がん就労者』支援マニュアル」を改変
厚生労働省「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」
就労者の治療と職業生活の両立を可能にするために、職場の取り組み方などを示した指針ができました。巻末には、就労者と職場が支援に必要な情報をやりとりする際の様式集も掲載されています。
厚生労働省「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」