更新日 2021年12月01日
がんとわかったら、これからどうなるか不安でたまらない人も少なくないでしょう。また、治療が進むと、さまざまな悩みや疑問が出てくるものです。しかし、治療法は進歩し、痛みや吐き気などの副作用もコントロールできるようになっています。就労を支援する仕組みなどについて知り、「助けられ上手」になって仕事と治療を両立させましょう。
退職などの決断は急がないでください
がんと診断されたときは心が大きく落ち込み、「自分が職場にいても迷惑をかけるだけ」と考え、辞職などに突き進んでしまうケースがあります。しかし、悲観的・絶望的な心理状態のときには、正しい判断ができなくなるため、人生にかかわるような重大な決断は避けてください。人事労務担当者や上司も、「心が落ち着いてから、一緒に考えよう」といって、サポートしましょう。
2週間以上経ってもつらさが回復しない場合は、適応障害やうつ病に移行している可能性があるため、主治医に相談し、必要があれば精神科医、臨床心理士などの専門科の受診も考えてみましょう。職場で気づいた場合は、本人を支援するとともに家族や産業医と連携するなどして早期に対策をとることが望まれます。
※1「適応障害」は、強いストレスをきっかけとして起こる不安や落ち込みによって日常生活に支障をきたし、精神的苦痛がふだんよりも非常に強い状態。
※2「うつ病」は、適応障害よりさらに精神的苦痛が強く、落ち込みが2週間以上続き、日常生活に大きな支障をきたす状態。
出典:国立がん研究センターがん対策情報センター「がんと心」
がんについての正しい知識を持ちましょう
がんといっても、その種類や進行度によって状態はさまざまです。今は「先生にお任せ」という時代ではありません。自分の状態を正確に把握するために、わからないことや疑問に思ったことは、主治医にどんどん質問していきましょう。より詳しく知りたいときは、セカンドオピニオン※を聞いたり、信頼できる情報源にアクセスして調べてみてもいいでしょう。情報を得ることで、漠然とした不安が解消することがあります。
職場では、治療と仕事の両立支援のため、がんの症状や治療の副作用などに対する基本的な知識を共有する取り組みが望まれます。
※「セカンドオピニオン」は、治療を受けている主治医とは別に、他の医療機関の医師に「第2の意見」を求めることです。近年、多くの医療機関では「セカンドオピニオン外来」の設置が増えています。がん相談支援センターに問い合わせると、その地域のオピニオン外来を行っている病院などの情報を得ることができます。
就労支援の制度を確認しましょう
治療しながら仕事を続けていくために、まずは就労支援の制度(就業規則、雇用契約書、労働条件通知書など)を確認しましょう。利用できる制度が明確になれば、治療や復職、通院のスケジュールもより具体化できます。ちなみに、職場はがんになったという理由だけで解雇することはできません。ただし、欠勤が多くなってしまうと解雇理由のひとつとなるので、注意が必要です。
「助けられ上手」になりましょう
治療と仕事の両立を支える人や仕組みはたくさんあります。ひとりで抱え込まないで、話しやすいと感じる人への相談から始めましょう。
職場では、相談しやすく、情報を共有し合えるような雰囲気に環境を整えることも大切です。
あなたを支えてくれる人や仕組みの例
人
- 家族
- 友人
- 職場関係者
- 患者会
- 自助グループ
- 地域の人々やボランティア など
制度
- 社会保障制度
- 医療保険制度
- 高額療養費制度
- 介護保険制度
- 傷病手当金 など
専門家
- 医師
- 看護師
- 薬剤師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 栄養士
- 心理士
- ソーシャルワーカー
- 歯科医師 など
場所
- がん診療連携拠点病院内のがん相談支援センター
- 診療所
- 訪問看護ステーション など
情報
- がん情報サービス
- インターネット
- パンフレットや冊子
- テレビ
- 新聞や雑誌 など
管理者のために ~がん就労者の話を聞くときの3つのポイント~
心が弱っている人に必要なのは、まず話を聞いてもらい、苦しみを理解してもらうことです。専門家でなくても、カウンセリングの基本を応用して、がん就労者の話をじっくり聴きましょう。
注意ポイント
相談された内容はもらさないことが原則です。問題解決のために、人事労務担当者や産業医などに伝える必要がある場合は、事前に本人の承諾を得るようにします。そのことによって、がん就労者に不利益が生じないよう最大の注意を払いましょう。