更新日 2025年07月31日

胃がんは、日本人に多い代表的ながんです。原因としてはピロリ菌の感染や高塩分の食事、喫煙などが挙げられますが、上水道の整備などでピロリ菌感染が減ったことや塩蔵食品が少なくなったことなどで、減少傾向にあります。早期に発見して、手術療法など適切な治療を受ければ治る可能性の高いがんですが、進行するとほかの臓器に転移しやすく、油断は禁物です。
胃がんの進行
胃がんでは、胃壁のもっとも内側の粘膜層の細胞ががん細胞になります。進行すると胃壁の深くまで広がっていき、やがては胃壁を突き破って表面まで飛び出し、肝臓やすい臓、大腸など、ほかの臓器や組織に広がっていきます(浸潤)。
また、がん細胞は、リンパ管に入ってリンパ節に転移したり、血管に入って血液によって移動し、肝臓や肺など別の場所で増殖することもあります(転移)。リンパ節には、早期のがんでも転移することがあります。
胃壁の深達度
胃壁におけるがんの浸潤の程度を「深達度」といいます。
深達度は以下に分類されます。

T1b ▶がんが粘膜層にとどまっている。
T1a ▶がんが粘膜下層にとどまっている。
T2 _▶がんが固有筋層に入り込んでいる、あるいは浸潤している。
T3 _▶がんが固有筋層を越えて漿膜下層に浸潤している。
T4a ▶がんが漿膜を越えて胃の表面に出ている。
T4b ▶がんが胃の表面に出た上に、他の臓器にも広がっている。
胃がんの病期
がんの進行度は病期(ステージ)で表します。胃壁の深達度とリンパ節転移の個数によって、Ⅰ~Ⅳのステージに分類されます。数字が大きくなるほどがんは進行しており、転移のおそれも高くなっていきます。
病期が重くなるに伴い、5年生存率は大幅に低下していきますが、その半面、胃がんをⅠ期で発見できれば、5年生存率は98%を超えるというデータも出ています。胃がんは、早期発見・治療が何より大切なのです。
参考:国立がん研究センター がん情報サービス
症状
おもな症状は、なんとなく胃が重い、不快感がある、胃が痛い、胸やけがする、食欲がない、食べ物の好みが変わったなど。早期の段階では症状がまったくみられない人が多く、なかには進行しても症状がみられない人もいます。
治療方法
胃がんの治療は、病期に応じて「内視鏡的治療」「手術療法(外科療法)」「化学療法(抗がん剤治療)」等が行われます。早期であれば、内視鏡を使って開腹することなく胃がんを切除することも可能です。手術治療の場合でも、腹腔鏡を使用して体への負担を減らす方法もあります。
検査方法
市区町村で実施される胃がん検診では「胃内視鏡検査」が行われます(※)。精密検査では、最初に胃エックス線検査を受けた場合は胃内視鏡検査を、最初に胃内視鏡検査を受けた場合は胃生検(胃の組織を採取し、病変が疑われた部位を直接観察すること。)、胃内視鏡検査の再検査または腹部CT検査など、さらにくわしく調べるための検査が行われます。
これらの日本の診断技術は世界トップレベルで、胃がんの死亡率が減少傾向にあるのは、ピロリ菌感染が減ったことに加えて、胃がん検診で早期発見の確率が高まったからといえます。また、胃がんのリスクであるピロリ菌感染は、「ヘリコバクターピロリ抗体検査」で調べることができます。感染していた場合は、1週間程度の服薬によって除菌することが可能です。ただし、胃粘膜の萎縮がすでに生じていた場合は胃がんになるおそれがありますので、定期的な胃がん検診は欠かせません。50歳を超えたら、2年に1回は胃がん検診を受けましょう。
※厚生労働省が定めるがん検診の指針では、胃がん検診の対象年齢は原則50歳以上ですが、胃部エックス線検査については、当分の間、40歳以上に対し年1回実施可能となっています。なお、品川区では、40歳以上の偶数年齢の方を対象に2年に1回、バリウム検診を実施しています。