おもながんの治療法

更新日 2025年07月31日

集学的治療

がんの治療法には、次に紹介する「手術(外科療法)」、「化学療法(抗がん剤治療)」、「放射線治療」などがあります。今日のがんの治療においては、それぞれ単独の治療方法のみを選択するのではなく、がんの種類や進行度によっては、より高い治療効果を目指して、これらの治療法を組み合わせて治療することがあります(集学的治療)。それぞれの治療にはそれぞれの治療の専門医が携わります。

手術療法(外科療法)

がんと周囲のリンパ節を切りとってしまう治療方法で、現在の日本のがん医療で、まず第一に選択される治療法です。がんだけを切りとろうとすると、とり残して再び増殖してしまう心配があるため、通常はがんの周囲の正常な組織を含めて切りとります。ほかの場所に転移していなければ、がん細胞を1つも残さず切除することで完治が望めます。
ただし、がん細胞と一緒に正常な組織もある程度切りとるため、その分臓器や体の機能が低下してしまうことがあり、日常生活に不便が生じたり、見た目が気になるような状態になることもあります。
手術治療は、あまり広い範囲に転移をしていない場合や、大きく増殖していない中期以前の場合を中心に選択されます。最近では、内視鏡的治療など、早期がんを中心に切りとる範囲を最小限にとどめる縮小手術も行われています。

内視鏡的治療

内視鏡的治療

検査にも使われる内視鏡を利用し、体内のがん細胞を切りとる手術治療の一種です。開腹手術をしなくてもすむため、一般的な手術治療とくらべて体への負担が少なく、最小限のダメージですみます。
技術の進歩も目覚ましく、リンパ節への転移がない早期の胃がんであれば、この治療法だけで完治が望めるケースもあります。
また、おなかに何か所か小さな穴を開け、そこから内視鏡などの器具を入れて手術を行う腹腔鏡下手術もよく行われるようになっています。

化学療法(抗がん剤治療)

全身にがん細胞が広がった進行がんでは、手術や放射線治療だけではがんを完治させることは非常にむずかしくなります。この場合、治療の中心は、化学療法になります。化学的に抽出、合成した薬を使っての治療のことで、もっとも代表的なのが抗がん剤による治療です。注射や内服、点滴などにより血液とともに全身をめぐってがん細胞を攻撃するため、全身療法とも呼ばれます。違ったタイプの抗がん剤を複数使用する多剤併用療法が主流で、脱毛や吐き気などの副作用を分散、軽減することができます。

放射線療法

放射線療法

放射線治療は、手術、薬物療法と並ぶがんの3大治療法の1つで、がんにX(エックス)線やγ(ガンマ)線などの放射線を当ててがん細胞を死滅させる治療方法です。放射線治療は、体の外から放射線をあてる「外部照射」と、体の内側からがんやその周辺にあてる「内部照射」があり、両者を組み合わせることもあります。放射線があたっても、痛みや熱を感じることはありません。
一般的な放射線療法は、高エネルギーのX線を発生させるリニアックという装置(高エネルギー放射線治療装置)を用います。また、立体的にさまざまな方向から効果的に放射線をあてることで、短時間でがん細胞により多くの線量を照射し、周りの正常な細胞にはできる限り少ない線量を照射する方法も開発されています(ガンマナイフなど)。最近では、実施できる施設は限られますが、より病変部にのみ多くの放射線をかけ周囲の組織には被爆の少ない陽子線や重粒子線を用いた高度な治療も可能になり、保険適用の範囲も広がってきています。
治療時間は治療方法によって異なりますが、1回あたり10~30分程度で、土日・祝日を除き、毎日、数週間かけて行うことが一般的です。ほとんどの場合、通院で治療を受けられ、通常の生活を続けられます。

免疫療法

私たちの体は毎日発生しているがん細胞を免疫の力で排除しています。免疫療法は、この免疫の力を利用してがん細胞を攻撃する治療方法です。ただし、治療効果が証明された免疫療法はまだ一部に限られています。また、保険診療で受けられる治療もありますが、治療できるがんの種類は、治療法や薬ごとに限定されます。
代表的な治療方法としては免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ(ブレーキがかかるのを防ぐ)薬である「免疫チェックポイント阻害薬」と、免疫ががん細胞を攻撃する力を強め、免疫にアクセルをかける方法である「エフェクターT細胞療法」があります。どちらも治療が有効ながんの種類が限られており、副作用のおそれもあるため、治療に際しては担当医とよく相談することが大切です。そのほかに、国内で効果が証明され、保険診療で受けられる薬が一部のがんの治療で使われています。
なお、自由診療として行われる免疫療法には、治療効果および安全性については効果が保証されていないものも少なくないため、費用を含め慎重な確認が必要です。

その他の治療法

レーザー療法

レーザー療法には、腫瘍焼灼法と光線力学的治療があります。腫瘍焼灼法は、1cm以内の距離から高出力のレーザー光線をくり返し照射してがん細胞を死滅させる治療法です。光線力学的治療は、がん細胞に蓄積しやすい光感受性物質を投与しておき、そこに低出力のレーザー光線をあてて、がん細胞だけを死滅させる方法で、患部組織の機能を損なわずに治療することができます。レーザー光線は、体内に挿入した内視鏡の先端から発射されます。

ホルモン療法

乳がんや子宮がん、前立腺がんなど、がん細胞が増殖していくのにホルモンを必要とするがん細胞があります。そのホルモンを分泌する組織を手術でとり除いたり、反対の作用をするホルモンを使うことでがん細胞の増殖を抑える治療法です。がん細胞を死滅させることはできません。

 

治療方法について、詳しくは国立がん研究センターのサイトもご覧ください

診断と治療(国立がん研究センターがん情報サービス)

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